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売春・人身売買・麻薬・殺人・・・メーオと過ごした1年10ヶ月
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今,タイにゆきます
2007-11-30 Fri 13:23
私は仕事がら、南北アメリカ、ヨーロッパ、中東、そしてアフリカまで足を運んだ事はあったが、アジアとは不思議と縁が無く、行ってもシンガポールだけだった。
プライベートでは、一度、前妻とインドネシアのバリには行ったことがあったが、リゾートで過ごしただけだったので、東南アジアの都市というのが、どんなものなのか想像もつかなかった。
ただ、メーオが住んでいるバンコクは、世界でも指折りの国際都市なので、バンコクに対する不安はなかった。
でも、そのような国際都市に住んでいながら、日本に自分の体一つで働きに出てきたメーオの家庭環境には正直不安があった・・・

私がメーオに会いに行ったとたん、「金ずるだと思われやしないか?」とか、どうかしたら、「臓器売買の為に殺されるかも?」なんてことまで考えた(笑
まあ、臓器売買までは冗談だったが、メーオの家庭環境を見て、「メーオに失望しやしないか?」という不安は強く感じていた。

私はとりあえず、S姉さんとS姉さんの旦那さんには、メーオに会いにタイに行くことを伝えた。
S姉さんもS姉さんの旦那さんも、そのことを、まるでわがことのように喜んでくれた。
S姉さんは、タイ初上陸の私の為に、タイ人に好かれるマナーというものを、色々と教えてくれた。
私はその、S姉さんから教えてもらった事を、丁寧にメモにとった。
そして、S姉さんは、タイ語で、「あなたの娘さんと結婚させてください。」というセンテンスまで教えてくれた。
私とS姉さんの旦那さんは、それに対して大笑いしてしまったのだが、S姉さんは、「コレハ ダイジナコトネ!」と真剣な顔で私たちに言った。
私は、そのS姉さんの気持ちが本当にうれしかった・・・

S姉さんの旦那さんは、「タイでどのような展開になるかわかりませんが、とにかくメーオちゃんと真剣に、今後の事を話し合う事をお勧めしますよ。」と言ってくれた。
確かに、今回の私とメーオの別れ方は、どちらも何も決定的な事は、一言も言っていなかった。
2人が離れ離れになるという事を理由に、ただただ、どちらも傷つかない別れ方を選んだに過ぎなかったかもしれない。
なので、今回の渡タイの一番の目的は、「メーオときちんと話をする。」という事に心に決めた。
「たとえ、何が起こっても、それを受け入れよう!」と、新たに決意したのだった。

そして、とうとう私がタイに行く日がやってきた。
途中、予期せぬ仕事が舞い込んで、「旅行のスケジュールを最悪、変更しなければならないかも?」と思った時があったが、会社の後輩に助けら、なんとかスケジュール通り、タイに行くことができるようになった。
私は、チェックインを済ませ、メーオが通ったセキュリティーゲートを通り、メーオを見送った出国手続きのゲートへと向かう下りのエスカレーを降りながら、あの時の事をいろいろと思い出していた。
そしてなんの問題も無く、出国手続きをすませ、メーオへのお土産である、香水を免税店で購入し、飛行機への搭乗時間まで、静かにまった・・・

それから間もなくして、航空会社のアナウンスにより、飛行機への搭乗手続きが始まった。
私は、今回飛行機の中に持ち込む手荷物がなかったので、搭乗手続きがすべて終わるまで待っていた。
そして、搭乗手続きの列に並ぶ人を何気なく眺めていると、日本人男性とタイ人女性のカップルが仲良く手をつないで待っているのが目に入った。
私は、その光景を見ながら、「私もいつかは、メーオとあのように、2人でどうどうと日本からタイへ出国できるような日が来るのだろうか?」と考えた。
でも、私は、両ほほを軽く両手でたたき、すぐにその妄想を頭の中からかき消し、搭乗手続きの列に向かった・・・

それから、約30分ほどして、私が乗った飛行機は、無事に成田を飛び立った。
そして、私の視界からどんどん小さくなる成田を見ながら、

「メーオ、今から君に会いに行きます。」
「そして、今、私が考えていることを、恐れずに君にぶつけるよ。」

と、心の中でつぶやいた・・・
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決意
2007-11-28 Wed 19:34
あの時に、メーオが、「タイに帰って落ち着いたら、かならず電話するからね。」と言った言葉は嘘ではなかった。
メーオは、「帰国してすぐのころは、親族や友達との時間を取ったりするのに忙しかったの。」「連絡するのが遅れてゴメンネ。」と、私に説明した。
でも私は、そんな事はどうでもよかった。
メーオが、再び私に電話をかけてきてくれたことが本当にうれしかった。

私は、メーオとこれからも連絡をとれるように、メーオの近況など後回しにして、とにかく、メーオの携帯番号を聞いた(笑
「そういえば、昔、メーオは、「タイの携帯の電話番号なら教えてあげる。」なんて、冗談を言っていたね。」「でもそれが本当になっちゃったね。」なんてしょうもない会話をしながら、私とメーオは、日本とタイで時間を共有していた・・・

そのような会話をつづけていると、メーオが、「カス、今月休みをとることはできる?」と聞いてきた。
私は、休みを取る予定にはしていなかったが、有給はいくらか残っていたし、年度末という事もあって、有給消化ができないわけではなかった。
そこで、メーオに対して、「どうして?」と聞き返した。
するとメーオは、「もし可能ならタイに遊びに来ない?」
「日本でいろいろしてもらったお礼に、カスにタイを紹介したいの。」
「私の家族も、カスにお礼がしたいと言ってる。」
「だから、カスに、タイに来てほし~な~なんて思ってるの。」と、思いっきり甘えた声を出して来た。

そんな誘われ方をして、断るような男はまずいない(笑
私は、二つ返事でOKして、タイに行くことを決めた。
タイへのスケジュールは、会社との調整があるので、明日にでもいうわけにはいかないが、メーオ自身のスケジュールは、私に合わせる事が可能との事だったので、「1・2週間後ぐらいならば、余裕でタイに行けるのではないか?」と考えた。
それを聞いたメーオは、電話の向こうで喜んでいた。

その日は、夜も遅かったと言う事もあって、あまりメーオの現状を詳しく聞くことはできなかったが、タイに戻ったメーオは楽しくやっているようであった。
私は、メーオの声を、もう一度思い出し、ベッドの上に寝転んで一人ニヤニヤしていた。
私の顔を鏡で確認していたら、とんでもなくだらしない顔をしていただろうと思う(笑
そして、そのような状態でベッドに横になり、「タイか・・・どのようなところだろう?」とひとりごち、まだ見ぬタイという国に期待を膨らませていた・・・

次の日、会社で上長に有給について交渉すると、私がリードしていたプロジェクトは、終わったばかりというタイミングも手伝ってか、簡単に有給申請が受理された。
上長は、「タイで何するの?」と聞いてきたのだが、さすがに「彼女を追いかけに行きます。」とは言えなかったので、「ちょっとタイで命の洗濯に行ってきます。」と答えた。
私の返事を聞いて、上長はニヤリと笑い、「あんまり羽目を外すなよ。」と言ってくれた。
私がタイに行って、「風俗を満喫しよう。」と考えていると思ったのだろう・・・

その夜、私はメーオに電話して、タイ渡航のスケジュールを伝えた。
メーオは、「楽しみにしてるから、早くタイに来てね!」と、とても喜んでくれているようだった。
そのメーオの言葉に、私も自然とうれしくなったのだが、それと同時に言いようの無い不安も感じていた。

メーオは、私をどのような立場として迎えてくれるのだろう?

彼?

それとも

元彼?

私は、「どのように扱われても、それを受け入れる心構えでタイに行かなければならない!」と、メーオと他愛のない馬鹿話をしながらも、しっかりとした決意を固めたのだった・・・
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国際電話
2007-11-27 Tue 13:38
通知不可

・・・・・・・・・・・・・・

非通知設定にはしてないが、何らかの原因で、番号表示ができないという事・・・
このような表示を初めて見た私だが、今の私が置かれている状態で、まず頭に浮かんだのが、「国際電話」というキーワードだった。

しかし、仕事がら、国際電話はよくかかってくるが、「通知不可」という表示は見たことがない。
なので、「自分が思い違いをしていないかどうか?」、ということを冷静になって考えてみた。
そこで一つ浮かんだのが、国際電話の場合で、今まで私が受けたことのない条件だった。
それは、海外のキャリアーと契約している携帯から日本のキャリアーと契約している携帯への国際電話のパターンだ。
さすがに、このパターンでの国際電話は受けたことが無い。
もし、このパターンで日本に電話をかけてきた場合、どのような表示になるかは、その時の私にはわからなかった。

しかし、想像だけを膨らませていても何の意味も無い。
そこで、私は、また電話がかかってくるのを待つことにした。
通常、人のパターンとして、電話が通じなかった場合、再度かけ直すのに待つ時間は、15分、30分、1時間というのがもっとも多い。
この電話がかかってきて、40分が過ぎているという事は、次のチャンスは、今から20分前後だと、私は考えた・・・

電話を目の前に置き、私はとにかく「通知不可」の人が、再度電話をかけてくるのを待った。
この待っている間、私は、もし電話の主が、
「私が想像している人だったらどうしようか?」
「その人は、なんの目的で私に電話をかけてきているのだろう?」
「どのような感じで、何を話しかければいいのだろう?」と、電話の主が誰かも解らないのに、「あの人」からの電話だと決めつけて、いろいろとシュミレーションを始めていた・・・

そんな事を考えていると、目の前に置いてあった電話が鳴った!
その電話が鳴るのを待っていたはずなのに、その呼び出し音に、私は心臓が飛び出るかと思うぐらい驚いた。
そして深呼吸して、携帯のディスプレイを見た。
そのディスプレイには、明らかに、「通知不可」と表示されてあった。
私は、いっそう早く鳴りだした心臓に右手を添えて、左手でその携帯を取り上げ、通話ボタンをおした。

「もしもし・・・」

私は、相手の出方を探るように、少々、警戒心を含んだ声で、その電話に出た。
その電話の向こうからは、明らかに電波状態が悪いときに聞かれるノイズ音が鳴っていた。
そして、私の返事から、一呼吸置いたぐらいのタイミングで、向こうからの声が聞こえてきた。
「ハロー カスですか?」
電話が遠く、なおかつ、ノイズもひどい状態だったので、ちょっと聞き取り辛かったが、その声は、明らかにほんの少し前まで聞いていたあの声だった。
私は、「何か答えなきゃいけない。」と思ったが、なかなか次の言葉が口から出てこなかった・・・

電話の主は、なかなか返事がかえってこないことに心配になったのか、もう一度、「ハロー カスですか?」と、同じ言葉を繰り返してきた。
そして、「メーオです。」「聞こえてますか?」と言ってきた。
私は、「メーオです。」という言葉を聞いた時に、今まで我慢していた涙がボロボロ出てきた。
メーオは、もう一度、電話の向こうで、「ハロー?」と言ってきた。
私は、メーオの3回目の問いかけにやっと答える事ができた。
「久し振りだね、メーオ。」「元気だったかい?」
私の返事で、ちょっと安心したのか、メーオの声は、明るい声で、「久し振り!」「カスも元気だった?」と、言った。
電話なので顔は見えなかったが、電話の向こうでは、明らかに私が好きになったあの微笑みを見せてくれていたのだと思う。

そして、このメーオからの電話のおかげで、私とメーオの時間は、もう少しだけ繋がることになる・・・
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通知不可
2007-11-26 Mon 00:24
横浜に戻ってきた私は、最初こそ、「メーオがいなくてももう大丈夫。」と思っていたのだが、やはりいたるところにメーオとの思い出があって、寂しさを感じずにはいられなかった。
その為、自然と足は、S姉さんがいるタイマッサージ店へ、向かった。
別にマッサージを受けるわけじゃないのだが、S姉さんやお店の従業員さんと話したりするのは、本当に気がまぎれた。
でも、みんな気を使ってか、メーオの話は一切しなかった・・・

そんなある日、S姉さんの旦那さんが、お店にやってきた。
旦那さんは、私がS姉さんたちと談笑しているのを見て、安心したようだった。
そして、その晩は、旦那さんの申し出で、S姉さん、旦那さん、そして私で晩御飯を食べることになった。

今回は、いつも行くタイ料理屋さんでは無く、伊勢佐木町のカニ道楽での食事となった。
旦那さんは、「いつもタイ料理ばかりじゃ飽きちゃうでしょう?」「たまには、我々日本人のニーズも聞いてもらわないとね。」と、S姉さんを見ながら言った。
S姉さんは、「ナニ ソレ?」「ワタシ ワルイカ?」と、、旦那さんをひっぱたくマネをした。
ほんの最近までは、「私もメーオとこのようなやり取りをしていたな・・・」と、S姉さんと旦那さんを羨ましく思った。

ここのところ一人で食事するばかりだったので、S姉さんと旦那さんとの食事は大変楽しかった。
S姉さんと旦那さんがいなければ、私はメーオがいなくなったことへの寂しさで、頭が変になっていたかも知れないと思う。

そんな楽しかった食事もそろそろ終わろうかという時に、S姉さんが、旦那さんの脇腹を肘で突いた。
そして、それを合図にして、旦那さんは、ちょっと咳払いをして、私の眼を見ながらこう言った。
「カツさん。妻から、カツさんとメーオちゃんの事は、ある程度聞いて理解してますが、メーオちゃんの事、本当にこのままでいいんですか?」
「恐らく、妻のコネを使えば、メーオちゃんのタイでの住所や電話番号ぐらい探しだすの可能だと思いますよ。」
「もし、メーオちゃんとの事を、完全に諦めきれていないのなら、力になりますよ?」
S姉さんも、「タブン メーオモ、カスノコトマッテルネ。」と言ってくれた。

私は、その二人の申し出に、心揺らいだ。
「もう、私たちは終わったのだ。」と、いくら自分に言い聞かせても、それを受け入れられないでいる自分がいることもわかっていた。
でも、メーオと結婚することへの不安を抱えている自分がいることもわかっていた。
なので、その時は、「もう少し気持ちを整理させてください。」とだけ伝えた。
そんな歯切れの悪い回答をした私に、S姉さんの旦那さんは、「気持ちの整理がついたら、すぐに連絡をくださいね。」と言ってくれた。
私は、二人に心からお礼を言い、その食事会をお開きとした。

一人家に帰った私は、ベットに寝ころび、「もし、私がメーオをタイまで追いかけて行ったら、メーオはどう思うだろうか?」と考えた。
「喜んでくれるだろうか?」それとも、「ストーカと思われるだろうか?」などと、色々考えた。
でも、最終的には、そんな事を考えている自分が馬鹿らしくなった。
メーオが帰国して、もう2週間以上たっているのに、昔の彼女を思い出している自分に、心底腹が立った。
そして、そんな馬鹿らしい妄想を忘れ去るために、私はシャワーを浴びることにした・・・

シャワーを浴びること約15分、シャワーを終えた私は、今日の事を忘れるかのように、冷蔵庫に入っていた白ワインをラッパ飲みした。
ビールには強い私だが、ワイン、特に白ワインは、異様に早く酔っぱらう傾向にあった。
なので、メーオがいなくなって、なかなか寝付けない日が続いたので、私は、寝酒用に、安物の白ワインを大量に購入していた。
その白ワインを、味わいもせず、がぶ飲みしながら、ちょっと酔っぱらった頃に、何気なくプライベートの携帯を見た。
携帯には、一件の着信履歴があった。
私がシャワーを浴びたときにかかってきた電話だろう。
ただ、こんな夜遅くにプライベートの携帯に電話をかけてくる人はいないので、「間違い電話かワン切りキャッチだろう?」ぐらいの軽い気持ちで、その着信履歴を確認した。

着信履歴には、「数字」ではなく、「文字」が表示されていた。
私は、「なんだ非通知かよ。」と悪態をついた。
そしてその着信履歴を消そうとしたのだが、その履歴に書かれている文字が、「非通知」ではないことに気がついた。
着信履歴には、「通知不可」と書かれていた。
私は、見たことの無い表示に、「はあ???」「通知不可なんて野郎はしらね~な~」と、酔っ払いのおっさんの如くひとりごち、その場で大笑いした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しかし、その数秒後、私は我に帰った!
そして、この「通知不可」が意味する可能性を理解し、私の心臓は、バクバクと鳴り始めていた・・・
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手紙
2007-11-25 Sun 02:04
メーオと別れた後、私は契約が残っている都内のマンスリーマンションに戻った。
横浜に戻ってもよかったのだが、思い出が色濃く残っている横浜のマンションより、こちらのマンションのほうが過ごしやすいと思ったからだ。
でも、やっぱりメーオが帰った最初の夜は、寂しさで心が押しつぶされそうだった。
一人には慣れているつもりだったのだが、いつの間にか誰かが一緒にいる生活というものにどっぷりとはまっている自分に気がついた・・・

しかし、人間とはよくできた生き物で、ほんの3日程度で、一人に対する免疫はついたようだった。
メーオの事を忘れたわけじゃないが、「過去のいい思い出。」と割り切れるようにもなったようだった。
そうなってくると、いつまでもこの都内のマンスリーマンションに宿泊しているのも無意味なものに思えてきた。
なので、私は、意を決して、横浜に戻ることを決めた。
マンスリーマンション自体は、もう少し契約があったのだが、そう日のうちに契約を解約し、横浜のマンションに移動した。

久しぶりの横浜のマンションは、私たちが出て行った時のままの状態で、私を出迎えてくれた。
でも、うっすらと埃をかぶったテーブルが、私とメーオが過ごした時間が、もう遠い過去なんだという事を改めて認識させてくれた。

しかし、ひとつだけ、明らかに、最近を感じさせるものがあった。
そのテーブルの上には、手紙と何かが入った封筒が置いてあった。
その手紙に手を伸ばすと、それはメーオからのものだった。
恐らく、以前来た時に、置いておいたものなのだろう。
私は、深呼吸してその手紙を読んだ・・・

親愛なる カスへ

この手紙を読んでいるという事は、私はもうタイに帰った後だと思います。

面と向かって言うと涙が出てきそうなので、手紙を書こうと思います。

最初、カスを見たとき、私は、カスの事を、当時、私のお店の斜め前で働いていた、Jちゃんのお得意さんだと思いました。

当時、Jちゃんの所によく出入りしていた男性とよく似ていたので、そう思いました。

なので、カスが私のお店のドアをノックした時、正直、厄介なお客さんが来たと思いました。

「厄介な」というのは、今後のJちゃんと私の関係に、微妙な影響をおよぼすんじゃないかと思ったのです。

その為、最初の頃は、カスの事を、お客以上の人とは思わないようにしてました。

出会った頃は、私のこと冷たい女だと思ったでしょう?

でも、その頃は、私も日本に来たばっかりだったんで、周りの女性たちとの関係に気を使っていたの。

だから許してね。

でも、Jちゃんとカスが関係無いという事がわかった時は、私はとてもうれしかったです。

なぜなら、他のお客さんと違い、カスには、特別な感情を抱いていたからです。

そして、私の神様への願いが通じたのか、カスは私の特別な人になり、私がいろんな問題に直面しているときも、私を見捨てず励ましてくれました。

私は、黄金町で働いていた女性の中で、最もハッピーな女だったと思います。

他の女の子たちは、悪い男に引っかかったりして、ひどい目にあった子が多かったのですが、私はカスのおかげで、まともな生活がおくることができたと思ってます。

今後、私たちがどのようになっているのかはわかりませんが、何があっても私はカスを忘れません。

本当にありがとう。

心からそう思ってます。

最後に、テーブルに置いているお金は、カスが私の為に払ってくれた300万の残りのお金と、私の気持ちです。

どうか受取ってください。

カス、お金がすべてではないけど、お金は重要なものなのよ。

今度は、私みたいな悪い女の為に、300万ものお金を、簡単に肩代わりするような事はしないでね。

でも、そういうやさしい気持ちは、忘れないでね。

メーオ


封筒には、300万のうちの残り100万と、50万円が入っていた。
私は、「こういうところが、妙に律義なんだよな・・・」とひとりごちた。
そして、この横浜の部屋に戻ってきたことを後悔した。
やっぱり、メーオの事を完全に、「過去のいい思い出。」にするには、少々早すぎたようだった・・・
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さよなら日本
2007-11-22 Thu 11:43
みんなとお別れをしてしばらく泣きじゃくっていたメーオだったが、疲れからか、鳴き声はしだいにおさまり、寝息へと変わっていった。
私は、そんなメーオの寝顔を見ながら、成田へと車を飛ばした。

成田へと車を飛ばしている途中、私はメーオの寝顔をチラチラ見ながら、「この寝顔もこれが最後なんだな~」と、2人時間が終わろうとしている事を、ひしひしと感じていた。
いつかはこんな日が来るとは思っていたが、黄金町が崩壊してからの急展開に、正直、対応しきれていないのが本音だった。
メーオに対する未練だって、ほんとうはたくさんあった。
それにメーオとの結婚のことだって、考えなかったわけじゃない。
でも、「愛しているから。」だけじゃ、結婚生活は成り立たないのは、先の結婚生活で痛いほど感じていた私は、その結論を出すに至るまでには、二人が過ごした時間だけじゃ不十分と思っていた。
このまま結婚して、二人は幸せになれるのか、正直、自信がなかった。
そう考えると、二人とも別々の道を進むのが、互いにとって一番で唯一の解決策のように思えていた。
でも、これはもちろん私の一方的な思いであって、メーオがどのように思っていたのかは、解らない。
ひょっとしたら、この決断を下した私を怨んでいるかもしれないし、このような結果になってよかった思っているかもしれない。
そんな事を考えながら、一人悶々としている私の横で、メーオは、今まで何も苦労はなかったかのような笑顔で眠っていた・・・

そして私たちは、とうとう成田に着いた。
私はぐっすりと眠っているメーオを起こした。
メーオは、もう成田に着いた事に対してひどく驚いていた。
そして、最後の二人の時間、ずーっと眠ってしまっていた事を、私に申し訳ないと思っていたようだった。
私は、正直、最後の時間を、暗いムードで過ごすのは耐えられなかったので、メーオが寝ていた方が好都合だったのだが、わざと、メーオが眠っていたことに対して怒ったふりをして見せた。
メーオも、私が怒ったふりをしているのは解っていたので、まるで子供をあやすかのように私をなだめてれた。
これが、最初で最後の、人前で、2人がイチャイチャした時だった(笑
その時の私たちを見た方たちは、「バカップル、ここに極まれり。」ぐらいの不快感を抱いたかもしれないが・・・

そんな事をしながらも、メーオが帰国する準備は着々と進んでいく。
搭乗手続きは終了し、メーオの兄弟たちへの簡単なお土産も購入した。
そして、成田空港での、二人の記念写真もたくさん撮った。
あとは、出国手続きへ向かう前のセキュリティチェックのゲートをくぐるだけだった。

このゲートをくぐれば、もうメーオの姿は見えなくなる。
事実上のお別れということだ。
でも、私は、努めて明るくふるまい、「そろそろ行かないと、出国手続きが混みだすよ。」と、メーオに言った。
メーオも私の意図を読み取ったのか、笑顔でそれに答えた。
そしてセキュリティチェックに行こうとしたとき、メーオは不意にこちらを振り返った。
そして、「カスが買ってくれた携帯だけど、もらっていい?」と聞いてきた。
私は、メーオが完全に出国するまでに、なにかあるといけないから、すぐにでも連絡が取れるように、はじめからメーオに携帯を持たせるつもりだったので、「もちろん。」とだけ答えた。
メーオは、「ありがとう。」といい、セキュリテーチェックまで歩きだした。
メーオはセキュリティチェックで、2回ほど引っかかって、そのつど私の方を振り返り、私はそれを見ながら笑っていた。

そして、無事セキュリティチェックが済み、いよいよ出国手続きのゲートへと向かう時がやってきた。
私は、メーオが歩き出す方向に移動し、メーオが出国手続きのゲートへと向かう下りのエスカレータが見えるガラスの前で、メーオが見えなくなるまで手を振った。
さすがにそのときばかりは、私も、我慢していた涙があふれ出してきた。
メーオもそのときばかりは顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
そしてとうとうメーオの姿は見えなくなった。
これで、「私とメーオは本当に終わったんだ。」と思い、私は、しばらくその場に立ち尽くしていた。
でも、「これですべてが終わったわけじゃない。」「メーオの飛行機が、無事に飛び立つまでが、私の義務だ。」と、自分に言い聞かせ、私は展望デッキに移動した。

メーオとお別れをして、約、40分後ぐらいに、メーオから電話がかかってきた。
私は、「さっき、感動的なお別れをしたばかりなのに・・・」と、思わず苦笑してしまった。
電話のメーオは、いつものメーオに戻っていた。
私たちは、メーオが搭乗するまでの間、たわいのない話をし続けた。
先ほどの感動的な別れは、どこ行く風という感じだった(笑

しかし、時間は非情で、とうとうメーオが飛行機に搭乗する時間になった。
メーオはそのことを私に告げ、私も電話を切ろうとしたのだが、メーオが最後に、「タイに帰って落ち着いたら、かならず電話するからね。」と言ってきた。
私は、その言葉を単なるメーオのリップサービスだと思い、その時は軽く流し、最後に「じゃあ、元気でね、さよなら。」と言い、電話を切った。
私としては、これが本当に本当の最後だと思った。

そしてそれから30分後、メーオの飛行機は無事に成田から飛び立った。
私は、メーオの飛行機が完全に見えなくなるまで、展望デッキで見送っていた。
そして、メーオの飛行機が完全に視界から消えたのを確認すると同時に、メーオの電話番号を携帯のメモリーから消去した。
そしてその次に、携帯の待ち受けにしていたメーオの画像も消去した・・・
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さよなら横浜
2007-11-21 Wed 11:33
S姉さん計らいにより、その晩は、メーオのお別れパーティを急きょ開くことになった。
私は、明日の朝の成田の便が早いので、成田の近くにホテルを取っていたのだが、メーオと二人だけで過ごすと、湿っぽくなり、どうしていいか解らなくなると思っていたので、このS姉さんの提案には、正直助けられた気がした。
メーオも、「最後の夜は、多くの友達と、楽しく過ごしたい。」と言っていたので、本当に助かった。
S姉さんは、「知っている限りの友達を集めておくからね!」「19時ぐらいになったら、もう一度ここに来なさい!」と言い、S姉さん自身もかなり気合が入っているようだった(笑

それまで私たちは、横浜の街をぶらぶらしていた。
「ここには、あの時来たね。」とか「ここで喧嘩したね。」などとたわいのない話をしながら、昔の事を思い出していた。
そして、私たちは、、はじめて2人でデートした、チャンドラーズクラブハウス横浜に足を運び、ちょっとしたランチを食べた。
もう一度、あの時の事を思い出そうと思い、ウェイターさんにお願いして、あの時2人が座った席に通してもらった・・・

あの頃は、こうやってメーオとデートするのも一苦労だったのに、今では、こうやって2人で食事をすることができる。
でも、この時間も、後、半日で終わってしまうのだ。
そのような事を思い出すと、自然と目元がウルウルしてしまうので、私は、意識して、そのような事を考えないように、普段とは違いかなり饒舌になっていた。
いつもは、メーオがいろんな話をし、私がそれを聞いているのが普通なのに、この日ばかりは、立場が逆になっていた。
メーオは、にっこりとほほ笑みながら私の話に耳を傾けていた。
正直、しょうもない話題しかしてなかったと思うのだが、それでもメーオは、微笑みながら、私の話を聞き続けてくれていた・・・

そうこうしていると、約束の7時に、あっという間になった。
私たちは、急いで、S姉さんのお店に急いだ。
お店では、S姉さんと、その旦那さんが、私たちを待っていてくれた。
旦那さんは、メーオがタイに帰ることを、本当に残念に思っているようだった。
そして、私に、「今後の事は、いくらでも相談に乗りますから、遠慮しないでいろいろと聞いてください。」と言った。
旦那さんも、私とメーオは結婚するのだと思っているようだった。
それに対して、私は、「ありがとうございます。」「その時は相談させてもらいますので・・・」と、言葉を濁すことしかできなかった・・・

メーオのサヨナラパーティーは、若葉町の、あるタイ料理店を貸し切って行われた。
私たちがそのお店に行った時には、メーオの友達で、連絡の取れた女性たちが、すでに集まっていて、メーオがいないにも関わらず、パーティーが始まっているようだった(笑
そのパーティーは、飲んで、歌って、踊ってと、本当に楽しいパーティーだった。
私は、滅多に踊らないのだが、このときばかりは、踊りの輪の中に入り、メーオと一緒に、一心不乱に踊った。
すべてを忘れるように、踊って踊って、踊りまくった・・・

しかし、永遠に続くかと思われたパーティーも、そろそろメーオが成田に行かなければならない時間になってきた。
メーオは、最初、「寂しいから。」と、こっそりパーティーを抜け出そうとしたのだが、「S姉さんとその旦那さんには、お礼を言うべき。」という、私の意見を聞きいれ、S姉さんと旦那さんを外に呼び出し、さよならのあいさつをした。
すると、それに気づいた、数人の友達もお店の外に出てきて、メーオと最後の別れを惜しんでいた。
私は、みんなのお別れが終わるまで、車の中で待機していた。

いよいよみんなとのお別れの時、メーオは、努めて笑顔で対応していた。
そして、メーオは車のウィンドウを開け、みんなが見えなくなるまで手を振っていた。
しかし、みんなが見えなくなると、今まで我慢していたものが一気にあふれ出てきたのだろう、大声をあげて泣き出した。
私は、「メーオは強いね。」と言いながら、メーオを抱きよせた。
メーオは、私の腕の中で、子供のように泣きじゃくっていた・・・
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未練
2007-11-20 Tue 14:41
横浜に到着した私たちは、まず、自分たちの部屋へと向かった。
メーオが忘れ物をしたらしく、それを取りに戻ったからだ。

そして、2人して部屋に戻ろうとすると、メーオが、
「カスは下で見張っていて。」
「ママさんが来たらヤバイでしょ?」
と言って、私をマンションのエントランスで見張らせようとした。
S姉さんからの報告で、ママさんによる、シェーに参加していて、ママさんの弟と親しかった女性に対する暴行事件は終わっていたようだったが、メーオとしては、やはりママさんに対する恐怖をぬぐえていないようだった。
しかし私としては、部屋に行くまでの間に変な奴が見張っていたら困るので、とりあえず、部屋まではメーオに付き添った。
そして、メーオが部屋に入ったのを確認してから、マンションのエントランスまで降り、周りを見張ることにした。

そして、約、15分くらいして、メーオは部屋から降りてきた。
メーオは何も持っていないようだったので、「何を取ってきたのか?」と訪ねたところ、メーオは、左手の薬指を私に見せて、「これを忘れたの。」と言った。
左手の薬指には、私が以前プレゼントしたブルガリの指輪がはめられていた。

今まで、プレゼントはしたものの、お客さんがヤキモチを焼くからと、あまり指輪をはめていなかったメーオだが、今回は、一日中、左手の薬指に、私からのプレゼントの指輪をはめる気になったらしい。
「左手の薬指」というのが、ささやかな私へのプレゼントだったのかもしれない。

そして、その後、私たちは、今まで、いろいろと協力してくれた、S姉さんのタイマッサージ店に、お礼とお別れのご挨拶をかねて行った。
S姉さんは、メーオがタイに帰ることを大変悲しんで、その場で号泣しだした。
従業員の方たちももらい泣きしてしまい、S姉さんのお店は、しばらくは、タイ人女性の泣き声の大合唱だった(笑

一通り悲しんだ後、S姉さんは、このような事を言った。

「タイニカエルハ 1ネンダケネ。」
「アトハ、カストケッコンシテ、マタカエッテクルネ。」

確かに、今回メーオは、「出国命令法」に従って帰国するので、私と結婚すれば、1年後には間違いなく、日本に再入国することができる。
しかし、私は、たぶん、今回メーオが帰国することで、私たちの関係は終わると思っていたので、このような考えは全く持ってなかった。
でも、このS姉さんの言葉に、メーオに対する未練のようなものが、再び湧き上がった。
そして、私は、メーオの気持ちを読み取ろうと、メーオの顔を覗き込んだ。
メーオは、S姉さんに対して、笑顔を返しているだけだった。
「やはりこれがメーオの答えだろう。」と、私は心の中でつぶやいた。
私は、メーオに対する気持ちを、もう一度心の奥底にしまいこんだ・・・
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最後の1週間
2007-11-19 Mon 13:45
入管に出頭した次の日、私はメーオのチケットを手配するために、航空会社に勤めている友人に連絡した。
今回は、運よく友人の優待チケットが手に入り、メーオにいい席を用意してあげることができた。
その友人が手配してくれた席に、メーオはかなり喜んでいた。
そのメーオの喜びように、私もうれしくなった。
ここのところ、悪いことばかりが続き、あまりメーオの明るい笑顔を見ていなかったからだろう・・・
やっぱりメーオは、笑っているときが一番だった。

でも、チケットを購入したことで、メーオがタイに帰国する日も決定した。
メーオがタイに帰国する便は、入管に出頭予定の次の日の朝となった。
これで私とメーオが日本にいられる日数は、この日を含めて、きっちり1週間となってしまった。
「この1週間を、どうしようか?」とメーオに訪ねたところ、メーオは、「東京都内をいろいろと見てみたい!」と言った。
確かに、2人で住むようになってから、いろんな観光地には行ったのだが、都心にはほとんど行った事がなかった。
よく考えれば、私も、東京・神奈川に住んで、約25年になるのだが、見物といえるほど、東京を見て回った事はなかった。
なので、それをメーオと一緒にやるのは、「とても意味のあることだ。」と感じた。

私は、1週間、有給をもらい、メーオと一緒に、東京のいろんな所を見て回った。
定番の浅草はもちろんの事、お台場、六本木、原宿、皇居、そしてなぜか、赤穂浪士の墓所である、泉岳寺にまで足を運んだ。
メーオには、「有名なサムライのお墓だよ。」と説明しておいたのだが、あんまり理解していないようだった(笑

東京で、観光スポットと呼ばれる所を、とにかく見て回ったこの1週間・・・
とても重要な1週間だったにも関わらず、楽しかったという印象はあるのだが、なぜか詳細な部分まで覚えてはいない。
その時は、すべての時間を、自分の心の中に焼き付けようと思っていたのに・・・

ただ、この1週間の東京見学で鮮明に覚えている事がある。
それは、メーオは、おそらく最後になるだろう日本を、写真として残しておきたかったようで、いろんなところで写真を撮っていたのだが、ほとんどの場所で、「2人の写真を撮りましょうか?」と日本人の方たちが、私たちに言ってくれた事だ。
正直、「日本人ってこんなに優しかったかな?」と思うくらいだった。
そして、写真を撮ってもらった後に、メーオが言う、ぎこちない、「アリガトウゴザイマシタ。」という言葉を聞いて、多くの日本人の方が、メーオにしゃべりかけてくれた事は、今でも鮮明に覚えている。
今まで、メーオがやっていた仕事が仕事なだけに、あまり日本人に対して、良い印象を持ってなかったメーオだが、普通の日本人に初めて触れて、ちょっと考え方を変えたようだった。
「もっと違う形で日本に来ていれば・・・」と、メーオがポツリと言った言葉は、今でも忘れられない・・・

そんなこんなで、あっという間に1週間が過ぎ、入管に再び出頭する日がやってきた。
2回目の出頭は、ものの10分程度で終わった。
入管は、メーオが本当に出国したかどうかを確認するために、メーオが出国する便名をチェックしていたようだった。
これで、メーオが日本にいられるのは、ほぼ、今日1日だけとなった。
明日の今頃には、成田での出国手続きを済ませている事になる。

メーオと過ごせる最後の日をどうしようか考えていた時、メーオがすべての手続きを終え、私のところにやってきた。
そして、「カス、最後に横浜に行こうよ!」と言ってきた。
メーオが行動を許されているのは、東京都内だけだったので、このメーオの提案に、ちょっと躊躇したが、メーオの望みは、最大限かなえてあげたいと思い、私たちは、入管から横浜へと向かった。
二人が出会った場所、そしてほとんどの時間を共有したあの横浜に・・・
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出頭
2007-11-08 Thu 14:54
その日は、底冷えのするとても寒い日だった。
私とメーオは、品川の駅を降りて、品川埠頭にある入国管理局まで歩いて行った。
私は、品川の駅から、タクシーを拾おうとしたのだが、メーオが、「横浜以外の日本の街を歩いてみたいの。」と言い出したので、少々時間はかかるが、品川駅から入国管理局まで歩いていくことになった。

メーオをタイに帰そうと決めた私は、その日のうちに、入国管理局に電話をしていた。
内容は、「オーバーステイの外国人を出頭させるのですが、事前に準備しておくものはありますか?」ということである。
私のその質問に対して、入管の職員さんは非常に丁寧に対応してくれた。
入管の対応の悪さを、色々耳にしていた私は、かなり緊張して電話をかけたのだが、拍子抜けするぐらい丁寧な対応だった。

入管の職員さんは、メーオの国籍を尋ね、正規のパスポートの有無を聞いてきた。
私は、「メーオは正規のパスポートを持っている。」と伝えると、今度は、メーオが今居住している地区を聞いてきた。
私は、「今は、東京のマンションに住んでいます。」と答えると、「それならば、なるべく早いうちに、朝9時までに、パスポートを持って、品川にある入国管理局まで出頭してください。」「管理局の裏口が、窓口になってますから、後の事は、そこの職員に訪ねてください。」と教えてくれた。
私は、明日にでも出頭しようと、その時から考えていた・・・

そんな入管とのやり取りを思い出しながら、私は歩いていたのだが、メーオは品川駅から入国管理局への道を、自分の瞼に焼き付けるかの様に色々と観察しながら歩いていた。
開発中のビルを見ながら、「このコンドミニアムは、幾らくらい?」とか、「このオフィスビルには、どのくらいの会社が入っているの?」とか、「あのハイウェイは、どこから来てどこまで行くの?」など、はじめて街に出た、子供のような質問ばかりしてきた。
私は、正直、これから入国管理局で行われる事への不安で、心が押しつぶされそうになっていたのに、メーオは、そんなことを微塵にも感じていないようだった。
私は、そんな緊張感の無いメーオに少々いらつきながら、メーオの手を取り、入国管理局へ急いだ。

品川の入国管理局は、正規に入国する外国人にとっては、ただのモダンなビルに見えるのだろうが、メーオを連れた私には、外国人達を蹴落とす為の城塞のように見えた。
そして、一昨日、電話対応してくれた方の言葉どおりに、入国管理局の裏側に行くと、そこは、出頭してきた不法滞在・不法入国の外国人達であふれかえっていた。
私はその現状を見て、「これだけの不法滞在・不法入国の外国人を見た、まともな日本人は、嫌悪感を隠せないだろう。」と、少々複雑な気持ちになった。
でも私は、すでにまともな日本人ではない。
不法滞在の外国人を、送り返すと決めたにせよ、長い間かくまってきたまともじゃない日本人なのだ。
でも、たとへ、まともな日本人たちに、文句を言われようが、後ろ指さされようが、私はどんな手を使ってでも、メーオを、法律上最大限有利な形でタイへ帰してあげたかった・・・

入管でのメーオへの対応は、3時間程度で終わった。
正確に言えば、2時間45分の待ち時間と、15分の簡単な取り調べで、すべて終了した。
メーオのパスポートには、入国管理局からもらった書類がステイプラーで止められて、現状のメーオの立場というものが記載されてあった。
とりあえず、移動できる地域は限定されているが、普通に生活している分には何も支障がない内容だった。
ある意味、メーオは、日本政府から、かなりの制限つきではあるが、正規の滞在許可をもらったわけだ(笑

しかしその書類には、「出国用の航空券を用意して、1週間後、もう一度入国管理局に出頭するように。」と書かれてあった。
そう、私とメーオが一緒にいられる時間が、明確な数値となって表わされていた・・・
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限界
2007-11-07 Wed 10:38
その後も、メーオの前のママさんは、口封じの為に、Xちゃんとママさんの弟と仲がよかった女性を、三人ほど、チンピラを使い暴行したようだった。
また警察も、シェーをやっていたタイ人女性を、もう二人ほど捕まえ、調査を進めているようだった。
その度に、私は、タイマッサージのS姉さんに電話をかけ、今の現状を聞いていた。
幸運な事に、メーオの前のママさんは、「メーオをターゲットにはしてないらしい。」という情報を得た。
また、ママさんの弟は、完全に日本から逃げ出したという情報も得た。
不確かな情報だったが、それらの情報に、メーオは幾分か落ち着いたようだった。

しかし、同時に悪い情報も得た。
どうやら警察は、シェーをやっていたタイ人全員のリストを手に入れているらしかった。
シェーをやっていたタイ人全員を、事情聴取のためにしょっ引くとは思わなかったが、依然として、危険因子が残っているということには変りなかった・・・
そして、泣きっ面に蜂というかなんというか、メーオのストレスを限界まで引き上げる事件が起こってしまった・・・

メーオの友達の一人が、大岡川沿いのホテルでお得意様相手に営業をしていたら、そのお客との間に問題が起き、ホテルの5階の部屋から下に落ちて(突き落とされたという話もあるが・・・)しまった。
運よく、駐車場の屋根の上に落ちたことで、致命傷は免れたが、入院が必要な大怪我を負ってしまったらしかった。
もちろん、それらの事は、事件として処理されたため、入院はしたが、不法滞在の外国人ということで、結局は警察に捕まってしまった。
警察、メーオの前のママさん、そして友達の不慮の事故と、私とメーオを明るい気分にさせるものは、何一つなかった。

その晩、私は眠れなかった。
仕事、そして色んな問題が度重なった事で、肉体的にも精神的にも疲れていたのに、その晩は、メーオと出会ってから起こった事を、色々と思いだしていた。
そして、私の横で眠るメーオの寝顔を見ながら、重要な事を決心した。
「メーオをタイに帰そう。」
それが「メーオにとって一番いい。」と、思った。
同時に、私にとっても・・・

次の日、私は、昨晩考えたことをメーオに話した。
メーオは、「そうね、それが一番いいかもしれない。」と私の考えに同意してくれた。
そして、「私がいなくなっても大丈夫?」と尋ねてきた。
私は、「寂しいけど、メーオに何かあった本末転倒だから・・・」
「とにかく、メーオは、自分のことだけを考えてて。」
「出国の手続き等は、私がいろいろと手配するから。」と答えた。
それに対してメーオは、黙ってうなずいていた。

それは、メーオと出会って、1年8ヶ月が経った、2005年2月の事だった・・・
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後門の狼
2007-11-06 Tue 12:40
ある晩、私とメーオがぐっすり眠っているとき、メーオの携帯が突然鳴った。
メーオは、その電話にすごく不機嫌に対応していたのだが、突然、ベットから飛び起き、話を真面目に聞きだした。
そして、電話を切った後、ちょっとおびえた感じで、私に抱きついてきた。

私は、「何があったの?」とメーオに尋ねた。
すると、メーオは、「Dちゃんが、暴行を受けて、大怪我をしたみたいなの・・・」と答えた。
私は、「どうしてそんなことになったの?」とメーオに尋ねた。
メーオは、「どうも、ママさんがやったみたい・・・」と言った。
私は、「ママさんの?」と、ちょっと話が飲み込めないでいると、またメーオの携帯が鳴った。
今度は、メーオもその電話に真面目に対応していた。
そして、電話を切るや否や、「カス、ここから逃げよう!」と言ってきた。
私は、「明日の朝一で、会社が契約しているマンスリーマンションに二人で移動しよう。」とメーオ言った。
しかしメーオは、「今すぐ逃げたいの!」と、パニックに近い状態に陥ったため、とにかく必要なものだけかき集め、車で黄金町のマンションから、二人して出て行った。
そして車の中で、何が起こっているのかをメーオから聞いた・・・

Dちゃんと言うのは、メーオの知り合いである。
あまり親しくは無いが、面識はあるようだった。
そしてそのDちゃんは、Xちゃんとはとても親しかった。
その関係上、Xちゃんの彼、いわゆるメーオの前のママさんの弟のこともよく知っていた。
恐らく、Xちゃん事件の事も、それなりに知っていたのだろう。

そこでメーオの前のママさんは、警察へ、自分の弟の情報がいかないように、どうやら、Dちゃんを痛めつけたようだった。
ひょっとしたら、痛めつけるだけではなく、本当に殺そうとしたのかもしれない・・・

今後、メーオの前のママさんがどのように動くのかわからないが、メーオとしては、「どんな小さな危険からも逃れたい。」という、防衛本能のようなものが働いたようだった。
私は、とにかく黄金町を離れ、東京にある、会社が契約しているマンスリーマンションに潜り込んだ。
そしてメーオに、「たとへ友達でも、どこにいるのか話してはいけない。」「私以外の電話に出てはいけない。」という事を約束させた。

警察の件がひと段落ついたと思ったら、メーオの前のママさんという新しい問題が発覚し、私たちは肉体的にも、精神的にも、ひどく疲れ切っていった・・・
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前門の虎
2007-11-05 Mon 04:47
ある日、マンションに戻ると、メーオは部屋にいなかった・・・
ここの所、いろんな事があって、あまりマンションから出ないようになっていただけに、私は胸騒ぎを感じ、急いでメーオに電話をした。
すると、元気の無い声でメーオが電話にでた。
私は、「大丈夫かい?」「今どこにいるの?」と尋ねた。
するとメーオは、「S姉さんのお店。」と答えた。
S姉さんとは、メーオがよく行くタイマッサージ店の店長の奥さんのことである。
私は、「気分転換に、マッサージに行っただけか・・・」と、ほっとした。
すると、メーオは、「カス、悪いんだけど迎えに来てくれない?」と言ってきた。

私は、メーオのこの言葉に、ちょっと違和感を感じた。
なぜなら、最近のメーオは、伊勢佐木町界隈の土地勘を持ち、自分で歩くことを好んでいたからだ・・・
しかし、最近の取り締まりのこともあるし、Xちゃんの件もあるので、「メーオも慎重になっているのかも?」と思ったし、なにより、そのような時に、タイ人女性がフラフラ歩くの危ないと思い、その件はあまり深く考えずに、すぐにメーオを、お店まで迎えに行った。
しかし、お店につくと、雰囲気がただ事では無いことが一瞬でわかった。
S姉さんとメーオが深刻な顔で、何やら話し合っていた・・・

私が、「どうしたの?」と尋ねると、メーオが、「AちゃんとBちゃん、そしてCちゃんが、警察に捕まったの・・・」と答えた。
Cちゃんは、私が知らない女性だったが、AちゃんとBちゃんは、メーオの友達で、何回か会ったことがあった。
私は、その時、二人は仕事中に捕まったものだとばかり思っていたのだが、そうではなく、Xちゃんの事件の重要参考人として、警察に捕まったらしかった。

私は、「Aちゃん、Bちゃんも、あの事件に関係しているのか?」と、大変驚いたが、そうではなく、どうやら警察は、シェーをやっていた人たちに目を付け、調べているようだった。
もし警察が、シェーをやっていた人のリストを持っていれば、明らかにメーオまで手が回る。
しかし、その前に、「AちゃんとBちゃんが、事件の真相を自白するだろう。」とも考えた。
そして警察が、AちゃんとBちゃんの話を信じれば、うまくいけば、「メーオの前のママさんの弟は逮捕され、弟を逃がそうとしていた、メーオの前のママさんまで、何らかのペナルティが課せられるかも知れない。」と、ちょっとした希望を見出していた。

そしてしばらくして、Xちゃんの事件の報道がアップデートされた。

神奈川・横浜市の公園でスーツケースの中からタイ女性(32)の刺殺遺体が見つかった件で、元飲食店店員のタイ女性(20)が遺体の遺棄を自供して逮捕。
殺したのは女らと共通の知人のタイ人男性(29)で、男はタイ人で作る“無尽講”の集金役、女らは会員で、3人の間で金銭トラブルがあったとみてさらに追求を続けている。


おそらく、元飲食店店員のタイ女性というのが、Cちゃんなのだろう。
とにかく、日本の警察は、メーオの前のママさんの弟を、犯人と断定し、捜査を行っているようだった。
私とメーオは、この記事を見て、ちょっと安堵したのだった。

しかし、Xちゃん事件は、これだけでは終わらなかった・・・
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動機
2007-11-04 Sun 05:30
Xちゃんが殺されたのは、「メーオの以前のママさんの弟との愛憎の縺れなのか?」と、私は思っていた。
嫉妬深い、タイ人の性格が原因で、このようなことが起こったのではないかと思っていたのだが、私の想像は見事に外れた。
Xちゃんが殺された理由は、結局はお金だった・・・

メーオの以前のママさんの弟は、Xちゃんが持っていた、シェーのお金を自分のものにしたいが為に、Xちゃんを殺害したようだった。
シェーとは、英語の Share のタイ語訛りで、日本のかつての、頼母子講・無尽講に似た、タイ社会では盛んな庶民金融のことだそうだ・・・

この制度を簡単に説明すると、

1:仲間うちで「講」を組み、一定額を毎月集める。

2:お金が欲しい人は、利息を払って(合計額から一定額を差し引いて)それを落札する。

3:この時、利息額の多い人が落札することになる。

4:落札した人は、当然、次回以降の入札の権利が無くなり、他のメンバー同様、翌月以降からは、所定の金額を毎月支払うようになる。

5:こうして、次々にメンバーが落札していき、メンバーの人数の回数だけ、同じことを繰り返す。

6:最後の人は、利息を払わずに、他のメンバーの利息をすべて得る。


という仕組みになる。

しかし、先に落札した人が逃げてしまうと、他のメンバーは被害をこうむることになり、実際、タイではそのような人が多く、警察沙汰になっていることも多々あるようである・・・

このシェーを、黄金町が崩壊したことでお金に困っている人たちの為に、何人かの女性たちが組んでいたそうだ。
そしてこのうちの一人が、Xちゃんで、最初にお金に困り、落札したのもXちゃんだった。
メーオの以前のママさんの弟は、このシェーのお金の利息の集金人をやっていたようだった・・・

この事件の為に、このシェーは成立しなくなり、かなりの女性達が困ったようだった。
そして、そのシェーをやっていた女性達の中に、メーオも含まれていた事が、後から解った。
私は、「そこまでお金に困るているのか?」とメーオに訪ねた。
するとメーオは、「そこまでお金に困って無いわ。」「今回は、困っている女性の為に、シェーにお金を出しただけだから心配しないで。」と言った。
私は、とりあえず、その言葉に安心した・・・

しかし、シェーが成立しなくなってしまった事以上に困ったことが、この後に起こってしまう・・・
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犯人
2007-11-03 Sat 02:46
メーオからショッキングな電話をもらい、私は、「メーオと何を話せばいいのだろうか?」と帰宅途中にいろいろと考えた。
いろんな話題を考え、いろいろとシュミレーションをしてみたものの、どれも明るい話題になりそうもなかった。
結局、いい考えが浮かばないままマンションに着き、私は、中の様子を窺うように、ゆっくりドアを開けた・・・

すると、部屋ではメーオの友達たちが集まって、晩御飯を食べながら、いろいろと議論をしているようだった。
私は、一人暗く落ち込んでいるメーオを想像していたので、その光景にちょっと拍子抜けしてしまった。

彼女たちは、メーオの部屋に集まり、みんなが持っている情報をできるだけ共有しようとしているようだった。
Xちゃんが殺されたのはどうやら間違いなく、また、ニュースになっている女性と、Xちゃんが同一人物なのも、ほぼ間違いがなかった。
そんな話が進んでいくうちに、ある女性の携帯が鳴った。

その携帯で話していた女性は、話が終わるとともに、ひどく興奮した様子で、電話の内容を伝えているようだった。
そして、その内容を聞いたメーオ達は、一斉に相槌を打った。
何やらその女性の話に、ひどく納得したようだった。

私は、メーオに今の内容を英語に訳してもらった。
そして、その内容に驚いた・・・
彼女たちは、Xちゃんを殺した犯人が分かったらしいのである。
その犯人とは、Xちゃんの彼氏だった。
つまり、メーオの以前のママさんの弟ということだ・・・

日本の警察は、捜査に取り掛かったばかりだというのに、黄金町に何らかの形でかかわっているタイ人達の間では、この事件の犯人は、既に周知の事実となっていた。
本当かどうかわからないが、殺し方まで、その段階で伝わっていた。

Xちゃんの彼氏は、Xちゃんのお腹をナイフで複数回刺し、そしてまだ息のある、Xちゃんをスーツケースに入れて捨てようとした。
しかし、Xちゃんの腕がうまくスーツケースに入らないので、腕の関節を逆方向にへし折り、スーツケースに入れ、茅ケ崎公園まで捨てに行ったそうだ。
確かに、あの狂犬のようなメーオの以前のママさんの弟なら、その程度のことはやりそうだ・・・
今まで明るみに出てないだけで、似たようなことは、過去にもやってきてたのだろう。

そんな弟を助けるために、メーオの以前のママさんは、すでに手を打っているそうで、弟は近いうちに、日本を出国する予定になっていたようだ。
メーオ達は、そういった情報をかなり深い部分まで知っていたようだが、不法滞在という身分上、警察に知らせることもできないでいた。
とにかく、日本の警察が、メーオの以前のママさんの弟を捕まえ、Xちゃんの仇を討ってくれることを願うしかなかった。
しかし、事件後、「特捜本部に女性の身元に関して48件の情報提供があったのだが、そのうちの1件だけが、タイ人女性に関する情報だった。」というニュースを聞いて、「警察がこの事実にたどりつくのはまだ先の事だ。」という、諦めの雰囲気が、メーオ達の間では流れていた・・・
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The Sixth Sense
2007-11-02 Fri 11:46
会社に行く用意をしているときに、時間確認用につけていた朝のワイドショーで、こんなニュースが流れた。

横浜市都筑区茅ケ崎南1丁目の茅ケ崎公園内にスーツケースが放置され、内部に遺体があるのを公園事務所の関係者が見つけ、110番通報した。
神奈川県警都筑署員らが確認したところ、遊歩道わきの斜面に銀色の旅行用スーツケースが横倒しになっており、中に20代ぐらいの女性とみられる遺体があった。
県警は死体遺棄事件として司法解剖し、身元や死因を調べる。


私は、「最近は日本も物騒になったもんだな~」とひとりごちたが、このニュースになんとなく、言いようのない不安を感じていた・・・

そして、会社で昼休みになった時に、何気なくインターネットを見ていると、上記ニュースの記事が出ていた。
内容はほとんど変わらなかったのだが、朝とは一部分だけ違う箇所があった。

朝は、

20代ぐらいの女性

と説明されていたのだが、インターネットでは、

20代ぐらいの、外国人女性

という内容に変わっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この、外国人女性 という表記に、私の不安はピークに達してしまった。

そして、その不安を払しょくできないまま働いていると、突然、携帯電話が鳴った。
その電話はメーオからだった。
私は、何を言われても驚かないように、覚悟を決めてその電話にでた。

電話の向こうから、メーオの鳴き声が聞こえてきた。
私は、「どうしたのメーオ?」と尋ねた。
電話の向こうからは鼻をすする音が聞こえ、そしてようやくメーオの声が聞こえてきた。

「X姉さんが、殺されたみたい・・・」

Xちゃん(X姉さん)とは、メーオの友達で、メーオが黄金町に来た当初、いろいろとお世話になっていた女性だった。
メーオは、Xちゃんの事を、「お姉さん!」と慕っていたが、Xちゃんが、メーオの以前のママさんの弟さんの彼女になったことで、だんだんと疎遠になっていた女性だった。
私はその話を詳しく聞く前に、「都筑区でスーツケースに入れられていた女性が、そのXちゃんだ。」と直感した・・・
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終わりゆく世界
2007-11-01 Thu 10:16
黄金町での仕事を辞めたメーオは、昼間の店舗のオーナーさんのつてで、福富町界隈のスナックで働くことになった。
そのスナックには、黄金町を辞めたメーオの友達が多数、働いていた。
そのことが、メーオを黄金町からスナックへ転職を、決心させたようだった。
私としても、いつ何が起こってもおかしくない黄金町で、メーオが働き続けるより、「そのスナックで働いたほうが良い。」と考えた。
ただ、そのスナックは、表向きこそただのスナックだが、もちろん連れ出しOKのスナックなのは言うまでもない・・・

その頃になると、メーオの友達たちも、職を求めて散り散りになり始めた。
あるものは、メーオのように、連れ出しのスナックで働きはじめ、またあるものは大岡川沿いで、たちんぼ営業を始め、またあるものは、入管に出頭し、タイに戻るものも出てきた。
メーオは、夜はスナックで、そして昼は、以前のお得意様相手に、ホテトル営業を開始した。
以前よりは収入は落ちたものの、メーオ自体は、それでも十分な収入を得られているようだった。

しかし、ホテトル営業には危険もつきものである。
黄金町のように、形だけとはいえ、ヤクザの後ろ盾があるならまだしも、なんの後ろ盾もない不法滞在の外国人がホテトルをやっているということを、以前のお得意様達も気づいたらしく、昔はある一定のマナーを守っていたお得意様達の態度が、どんどん横柄になってきた。
あるものは代金を値切り、あるものは代金を踏み倒そうとし、ひどい奴になると、複数の仲間を呼び、メーオをレイプしようとした奴まで出てきた。
このような、お得意様の態度の変わりようにショックを受けたメーオは、早々にホテトル営業をやめ、スナックだけに専念するようになった。

しかし、ただのスナックでの営業だけなら問題はないが、今までと同様の収入を得ようとするなら、そのお客から連れ出してもらわなければならない。
しかし、ホテルに行ったとたん、態度が豹変するお客が多いことに辟易としたメーオは、とうとうそのスナックも辞めてしまった。

その後は、伊勢佐木町のファッションヘルスで働いたり、ソープランドで働いたりしたが、お店のメーオに対する態度が、明らかに日本人従業員に対する態度とは違うことで、よくお店とケンカをし、どのお店も長続きしなかった。
それは、メーオの友達も同様で、金髪の白人なら、それ相応のお店に従事できるのだが、タイ人などのアジア人達は、ほとんど仕事が無く、あっても、日本人や白人の女の子達とは、かなりの待遇の差があり、メーオの友達は、一人また一人と、日本から去っていった。

メーオは、それでも日本に残ることを選択し、頑張っていたが、そのメーオの気持ちが折れてしまうような大事件が、ある日起こってしまった・・・
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