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2008-01-13 Sun 00:09
日本に帰りついた私は、すぐに会社に出社し、自分の上長とミーティングをした。
ミーティングの内容は、私の北米支社への移動に関してだった。 私が働いている会社の輸出は、60%が北米に対してである。 以前から、北米支社の支社長から誘いを受けていた私は、それを受けることにした。 この移動は、1年限定の移動だったので、海外で働くことを望んでいる社員には受けが悪く募集が常に行われていたものだった・・・ 上長は私のいきなりの移動願にかなり驚いたようだったが、私の会社は、部下の移動願を引き止めることはパワハラと認識されることもあって、私の移動願はすぐに受理された。 上長は、私の移動の理由を聞いてきた。 私は、「自分の経験の為に・・・」と回答したが、メーオとの事があり、「今の自分の環境をすべてリセットしたい。」というのが本当の理由だという事は言うまでも無い・・・ それからは、北米への移動の手続きが忙しく、メーオの事を思い出す暇もなかった。 もちろんメーオから電話がかかってくることもなく、私の中でメーオの思い出はどんどん薄れていった・・・ そしてとうとう、私は黄金町のマンションを出ていく前日になった。 私は、その日ばかりは、メーオとの思い出で、ガラにもなくセンチメンタルな気分になっていた。 「ここでこんなことがあったな・・・」 「ここでこんなことをしたな・・・」 などという事を思い出していた・・・ 忘れものがないか最後の確認をしていたところ、観音開きの収納の扉の内側に、メーオがつけた小さな鏡を見つけた。 私は、「こんなところにメーオの思い出か・・・」と、ひとりごち、その鏡を外した。 すると、その鏡の裏側には、隠してあったかのように、以前、メーオと撮った最初で最後のプリクラが貼ってあった。 そしてそのプリクラの下に、マジックで、「BAKA KASU!!!」と書いてあった。 私は、「なんだ、メーオが持って行っていたのか・・・」と、ちょっとうれしくなった・・・ でも、このままマンションを引きわすわけにはいかないので、シールはがし専用のスプレーをかけ、そのプリクラをはぎ取りメーオが書いた字もふき取った。 これで、私とメーオとの関係を示すものは、完全にこの世から無くなったのだろう。 その現実に、私は、しばし呆然と、その場に立ちつくしていた・・ 後日、マンションの引き渡しは、なんの問題もなく終わった。 私とメーオとの思い出を、すべて否定するかのように、手続きは淡々と進んでいった。 そして、すべてのチェックが終わり、とうとう、マンションのカギを管理会社の方に渡す時がきた。 私は、「これで黄金町ともさよならだ・・・」と、心の中でつぶやいた・・・ 鍵を管理会社の方に渡し、私は足早にメーオとの思い出が詰まったマンションを後にした。 そのまま、北米への移動に向け借りた都内のホテルに帰ってもよかったが、私は、ちょっとしたセンチメンタリズムに浸ってしまい、もう一度、黄金町を歩いてみることにした・・・ 黄金町は完全に閉鎖され、ゴーストタウンとなっていた。 私は、黄金町のメインストリートであるパフィー通りを歩きながら、以前の華やいでいた黄金町を思い出していた。 そして、パフィー通りを抜け、黄金橋を渡り終えた時、私は、「これで、すべてにおいて、本当にさよならだ・・・」と思った。 大岡川を渡り終え、ミニストップ側から見た黄金町は、過去の繁栄など微塵も感じさせないほど、ひっそりと静まり返っていた。 そして、大岡川沿いのわずかに残った桜を見ながら、「やっぱりメーオと桜をもう一度見るという事は叶わなかったな・・・」とひとりごちた・・・ それは、メーオと出会って、1年10ヶ月が経った、2005年4月の事だった・・・ そして・・・ これが私とメーオの時間の全て・・・ |