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売春・人身売買・麻薬・殺人・・・メーオと過ごした1年10ヶ月
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Epilogue
2008-01-14 Mon 01:16
2006年11月

エアコンディショナーがきいていても、体に温かい大気がまとわりついてくる感じがわかる。
でも空港が新しくなったこともあって、以前のように東南アジア特有の匂いが鼻につくことはなくなったようである。
ここは、スワンナプーム国際空港。
そう、「私はもう二度と来ないであろう。」と思っていたタイに、また降り立った・・・

新しい空港はとても広く、イミグレーションまでかなり歩かされた。
また、いろんな事がうまく回っていないようで、イミグレーションでもかなり待たされた。
私は、少しイライラしつつも、久し振りに聞くタイ語に耳を傾けていた・・・

そしてイミグレーションを通過すると、たくさんの人だかりができていた。
新しい空港になっても、タクシーへのお客の呼び込みは、以前と同じである(笑
私は、その人だかりの一歩手前で、辺りをぐるりと見渡した。
すると、「カツさ~ん!」と、元気のいい若い男の声が右のほうから聞こえた。
声の主は、会社の後輩、W谷であった。

W谷:
カツさん、お久し振りです。
わざわざ、バンコクまでいらしてくれてありがとうございます。


私:
いやいや。
仕事でアジアに来ることがなかったから、国際都市バンコクに来れててうれしいよ。


W谷:
そう言っていただけると助かります。
とりあえず、ホテルに向かいましょう。
仕事の話は、車のなかで・・・


私は、仕事でバンコクに来ていた。
以前、北米で対応したケースと同じ案件がタイでも出てきて、たまたまバンコク支店に、私と親しくしていた後輩が配属されたこともあって、バンコクに行かされたのだった。
車の中で、W谷は仕事の説明をしてくれた。
仕事内容は、想像していた通り、北米の案件とほぼ同じものだった。
なので、「そんなにバンコクに足を運ばずとも、プロジェクトは軌道に乗せられるだろう。」と思った・・・

W谷の説明も一通り終わったところで、W谷が、「ところで、今晩はどのようなコースがお好みですか?」と聞いてきた。
私は、「コース?」と聞き返した
すると、W谷は、「バンコクは国際都市ですからね、いろんな料理が食べれますよ。」
「タイ料理はもちろん、日本料理・フレンチ・イタリアンと、よりどりみどりです。」と、今晩の私への接待の話をしだした。
私は、「じゃあ、タイ料理でも食べてみるか。」と言うと、W谷は、「解りました。」「スクンビットにおいしいシーフードレストランがあるんです。」「そこに行きましょう!」と言った。
私は、「エンポリアムの近くのあの店の事か?」と、なんとなく想像はついたが、W谷には黙っておいた・・・

するとW谷は、「じゃあ、タイ料理の後は、タイ女性なんかいかがですか?」と、ニヤニヤしながら言ってきた。
私は、「そういえば、こいつは風俗が大好きだったな。」と、W谷の嗜好を思い出した。
W谷の誘いを無下に断るのも悪いので、「今日は遠慮しとくよ。」「仕事の進み具合を見てな・・・」「時間があったらぜひ行こうな!」と、とりあえず、W谷をガッカリさせない断り方をしておいた・・・

するとW谷は、「じゃあ、とりあえず今日は食事だけにしときましょう。」「ちなみにカツさんって、どんな女性が好きですか?」「タイのカラオケは、店によって女性の傾向が違うんで、間違いのないようにしときたいんですよ。」と言ってきた。
私は、「さすが、仕事で細かいところまで気がきくと有名なW谷らしい事前リサーチだ(笑」と思い、その質問に笑ってしまった・・・

そして、ひとしきり笑った後に、「そうだな~」「猫のような女性かな?」とだけ答えた。
W谷は、「猫のような女性?」「それは性格が猫のようなという意味ですか、それとも体つきが猫のようにしなやかという意味ですか?」ともう少し詳しくリサーチしようとしてきたので、私は、「猫という名前の女性だよ・・・」とだけ答え、W谷の質問を煙に巻いた。
W谷は、私が出した意味不明の要求に、ちょっと困ったような顔をしていた・・・

そのW谷の困った顔を見て私は、「W谷、やっぱり、ホテルには行かずに、先にバンコク支社に行ってくれないか?」とW谷に告げた。
W谷は、「もう働くんですか?」「今日はホテルでゆっくりすればいいじゃないですか?」と、ちょっと呆れたような顔をしていた。
私は、「働いてないと気がめいる性分なんでね。」「バンコク支社についたら、集めることが可能なメンバーを緊急招集しといてくれ。」とW谷に告げた。
W谷は、「え~マジですか?」「緊急招集なんてしたら文句が出ちゃいますよ。」「私はここでは若い方なんですからね。」と、本当に困った顔をした。
私は、「今日までは、そのあたりをコーディネイトするのがお前のし・ご・と。」「明日からは俺がやるからさ!」と、W谷の肩をポンと叩いた。
W谷は、渋々、車からメンバーに対して電話をかけた・・・

「猫という名前の女性」とは、言わずもがなメーオの事だった。
緊急招集は、メーオの事を思い出させたW谷への、ちょっとした嫌がらせのようなものだった(笑
まあ、メーオに対する未練はないが、やはりバンコクにまで来てしまえば、それなりにメーオの事を思い出す。
しかし、悲しいかな、私とメーオは、もう完全に終わっているのだから思いだしたところで、なんのメリットにもならない・・・

でも、もし・・・

もし、道で偶然ばったり出会えたら、互いに笑って話せたらいいなと思った・・・

私はそのような事を考えた後に、「よし!明日からのバンコクでの仕事を頑張るぞ!」と車の中で叫んだ。
W谷は、「明日ってなんですか?」「今現実に私は困ってるんですからね!」と悪態をつきながら、緊急ミーティングの為の連絡で、携帯に向かって頭を下げ続けていた・・・

その後、結論から言うと、約2ヶ月のバンコク滞在中に、私とメーオが会う事は無かった・・・

ただ、この滞在期間中に、思いがけないところから、メーオについての情報が得られた。
メーオは念願かなって、バンコクに、SPAのお店を開いたようだ・・・

私はこの偶然に、正直、心揺らいでしまい、メーオのお店に、足を運んだのだが、幸か不幸か、その時、メーオは不在だった。
そしてそれを最後に、私は、「メーオとコンタクトを取ろう!」と考えた事はないし、実際行わなかった・・・

メーオが自分の夢を叶え、幸せにやっていることがわかっただけで、私にとっては十分だった・・・

そう、十分だ・・・

そして、バンコクでの2ヶ月間は、あっという間に過ぎ、タイでの余韻に浸る間もなく、私は足早に日本に帰国した。
今度は、スワンナプーム国際空港の眼下に広がる夜景を見ながら、「さよなら。」とひとりごちた。
これで、私とタイを結びつけるものは、一切なくなった・・・

・・・・・・・・・・・・

メーオとの思い出を除いては・・・


今回、私がこのブログを書こうと思ったのは、言い方は悪いが、自分の体の中にあった悪いものを、すべて吐き出したいと思ったから。
本当は、友人に聞いてもらうのが一番すっきりしたのだろうが、あまり知人に話せるような内容じゃないので(笑
でも、ブログに全部書いてみて、今はとてもすっきりした気持ちです。
これで、私も次のステップに進めそうな気がします・・・

という事で、黄金町の天使は、これで終了とさせていただきます。
短い間でしたが、私の稚拙な文章にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

そして最後に・・・

ありがとうメーオ。
僕の黄金町の天使。

☆☆☆โชคดีครับ☆☆☆
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残桜
2008-01-13 Sun 00:09
日本に帰りついた私は、すぐに会社に出社し、自分の上長とミーティングをした。
ミーティングの内容は、私の北米支社への移動に関してだった。
私が働いている会社の輸出は、60%が北米に対してである。
以前から、北米支社の支社長から誘いを受けていた私は、それを受けることにした。
この移動は、1年限定の移動だったので、海外で働くことを望んでいる社員には受けが悪く募集が常に行われていたものだった・・・

上長は私のいきなりの移動願にかなり驚いたようだったが、私の会社は、部下の移動願を引き止めることはパワハラと認識されることもあって、私の移動願はすぐに受理された。
上長は、私の移動の理由を聞いてきた。
私は、「自分の経験の為に・・・」と回答したが、メーオとの事があり、「今の自分の環境をすべてリセットしたい。」というのが本当の理由だという事は言うまでも無い・・・

それからは、北米への移動の手続きが忙しく、メーオの事を思い出す暇もなかった。
もちろんメーオから電話がかかってくることもなく、私の中でメーオの思い出はどんどん薄れていった・・・

そしてとうとう、私は黄金町のマンションを出ていく前日になった。
私は、その日ばかりは、メーオとの思い出で、ガラにもなくセンチメンタルな気分になっていた。
「ここでこんなことがあったな・・・」
「ここでこんなことをしたな・・・」
などという事を思い出していた・・・

忘れものがないか最後の確認をしていたところ、観音開きの収納の扉の内側に、メーオがつけた小さな鏡を見つけた。
私は、「こんなところにメーオの思い出か・・・」と、ひとりごち、その鏡を外した。
すると、その鏡の裏側には、隠してあったかのように、以前、メーオと撮った最初で最後のプリクラが貼ってあった。
そしてそのプリクラの下に、マジックで、「BAKA KASU!!!」と書いてあった。
私は、「なんだ、メーオが持って行っていたのか・・・」と、ちょっとうれしくなった・・・

でも、このままマンションを引きわすわけにはいかないので、シールはがし専用のスプレーをかけ、そのプリクラをはぎ取りメーオが書いた字もふき取った。
これで、私とメーオとの関係を示すものは、完全にこの世から無くなったのだろう。
その現実に、私は、しばし呆然と、その場に立ちつくしていた・・

後日、マンションの引き渡しは、なんの問題もなく終わった。
私とメーオとの思い出を、すべて否定するかのように、手続きは淡々と進んでいった。
そして、すべてのチェックが終わり、とうとう、マンションのカギを管理会社の方に渡す時がきた。
私は、「これで黄金町ともさよならだ・・・」と、心の中でつぶやいた・・・

鍵を管理会社の方に渡し、私は足早にメーオとの思い出が詰まったマンションを後にした。
そのまま、北米への移動に向け借りた都内のホテルに帰ってもよかったが、私は、ちょっとしたセンチメンタリズムに浸ってしまい、もう一度、黄金町を歩いてみることにした・・・

黄金町は完全に閉鎖され、ゴーストタウンとなっていた。
私は、黄金町のメインストリートであるパフィー通りを歩きながら、以前の華やいでいた黄金町を思い出していた。
そして、パフィー通りを抜け、黄金橋を渡り終えた時、私は、「これで、すべてにおいて、本当にさよならだ・・・」と思った。
大岡川を渡り終え、ミニストップ側から見た黄金町は、過去の繁栄など微塵も感じさせないほど、ひっそりと静まり返っていた。
そして、大岡川沿いのわずかに残った桜を見ながら、「やっぱりメーオと桜をもう一度見るという事は叶わなかったな・・・」とひとりごちた・・・



それは、メーオと出会って、1年10ヶ月が経った、2005年4月の事だった・・・

そして・・・

これが私とメーオの時間の全て・・・
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さよならメーオ
2008-01-12 Sat 00:50
メーオと別れた後、私はホテルのバーに行った。
最初こそ部屋でいろいろと考えていたのだが、部屋で考え込むと、いろんな事に胸が押しつぶされる様な感覚に襲われてしまった。
なので、人が多い場所に溶け込むことで、少しでも気持ちを紛らわせようと考えた・・・

そのホテルのバーは、結構ざわついていた。
本来なら、そういった雑音は不快なものなのだが、今の私には心地よく聞こえた。
そのバーのざわめきの中に一人溶け込み、私は現在抱えている問題について色々と考えた。
でも、当たり前だが、その場で回答を出す事などできなかった。
なので私は、もう一度気分を変えるために、ホテルの外に出ることにした・・・

私は一人でバンコクの街を歩いた。
バンコクは、なんというか、いろんな意味でエネルギーに充ち溢れた街だった。
私が今まで仕事で行った都市の中でも、恐らく上位にランクされるぐらい魅力的だと思った。
でも、やはり、華やかな部分の裏の部分がひどく目についてしまう国だとも思った。
そのような国で、「現在の生活レベルを落としてまで住むめるのか?」という部分は、やはり私の心の中に暗い影を落としていた。
結局その晩は、有効な回答が出せないまま部屋に戻り、いつの間にか眠ってしまった・・・

次の朝は、チェックアウトの日という事もあって、いつもの習慣で、結構朝早く目が覚めた。
まあ、これは、海外出張に行かされて、帰国日に飛行機に遅れないために身につけた、一種の特技である(笑
シャワーを浴び、ブレックファーストを食べ、余裕をもって荷造りをし、チェックアウトをする前にメーオに電話した・・・

タイ最終日も、メーオがバンコクを案内してくれることになっていたので、私は、「これからチェックアウトをする。」という事をメーオに伝えた。
メーオは、「後、30分ほどで、迎えに来れる。」と言ったが、私は、「それならば、約1時間後だな。」と、メーオ時間に、頭の中で計算した(笑
そして、メーオは私の計算通り、電話してから1時間後にホテルにやってきた・・・
メーオは、「ごめんね~」といいながらホテルのロビーに入ってきた。
私は、「大丈夫だよ。」「遅れてくることは解っていたから。」と、ちょっとからかうと、メーオはちょっとふくれっ面をしてみせた・・・

タイ最終日と言っても、飛行機は夜中なので、バンコクでメーオと楽しむ時間は十分あった。
2人でショッピングセンターに行ったり、観光地を回ったり、映画を見たり、食事をしたりして、私達はデートを楽しんだ。
でも、そのデートの間、私達が、結婚についての話をすることは一切なかった・・・

そして時間は進み、私達はドンムアン空港へ移動した。
早めに空港に着くようにしたつもりだったが、途中、ひどい渋滞に巻き込まれてしまった。
ドンムアン空港に向かう高速の上で、ほとんど車が動かなくなってしまい、私はちょっと焦ってしまった・・・

今頃は、空港の喫茶店でメーオと話をしている予定だったのだが、渋滞のせいでそれはできなさそうに思えた。
メーオもちょっと焦り始めているようだったので、私は、「心配しなくていいよ、メーオ。」
「遅れたら、また別の日に帰ればいいんだからさ。」「マイペンライ!ってとこだよ。」と言った。
するとメーオは、「このままタイに住んじゃえば?」と言った。
私は、それに対して、「そうだね。」と軽く相槌を打ったが、それからしばらくして、「メーオがこのまま日本に来るという手もあるよ。」と言った・・・

メーオは、「私は、1年間日本に入国できないでしょ~」と、笑いながら答えたが、私は、「一年ぐらいすぐだよ。」「だから、この1年で結婚の手続きと、メーオの日本人配偶者ビザの申請をしようよ。」
「そして、私と一緒に日本に住んでくれないか?」と、メーオに話した。
メーオは、「それはタイには住みたくないということ?」と、私に質問を返した。
私は、「将来的にはわからないけど、最初は日本で私がメーオを養う形で生活したいんだ。」「そして、お互い年をとってからタイに移住すればいいじゃない?」と、私の正直な気持ちをメーオ伝えた・・・

その時、ドンムアン空港へ向かう高速がノロノロだが動き出した。
メーオは、私の質問には答えず、車を運転した。
私は、車の外を眺めたまま、「バンコクの景色もこれで見納めだ・・・」と考えていた・・・

メーオの車は、ドンムアン空港への駐車場にはいかず、出国ロビーの前に止められた。
そしてメーオは重い口を開いた。
「カス、私はやっぱり日本に行けない・・・」
私は、そのメーオの言葉で、メーオの気持ちをすべて理解した。
「わかったよメーオ。」「今まありがとう。」と言い、メーオの頬にキスをした。
そして、車の後部座席から荷物を取り出し、最後に、「幸せになってね、メーオ。」と言いったが、メーオは、ハンドルに突っ伏したまま何も言ってくれなかった。
私は車のドアを閉め、搭乗手続きの為に、航空会社のカウンターに向かった。
その間、メーオの車へ振りかえらなかったのだが、最後の最後で我慢できずに振り返った。
しかし、そこにメーオの車はなかった・・・

私は、フライトギリギリまで携帯の電源を入れ、メーオに電話しようかどうか迷ったが、結局メーオに電話をかけなかったし、メーオから電話がかかってくることもなかった。
私は、「これでタイともお別れか・・・」とひとりごち、携帯の電源を切り、飛行機に乗り込んだ・・・

そして、飛行機もいよいよ飛び立った。
眼下に広がるバンコクの夜景を見ながら、私は、「さよならバンコク・・・」とつぶやいた・・・

そして・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さよならメーオ・・・
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幸せの条件
2008-01-11 Fri 01:58
タイに住む・・・
このメーオが出した結婚の条件は、私の考えを根底から覆した。

私の会社は、確かにタイに支社を持っている。
ただ、駐在として出向する形態は取っておらず、一度本社を退社し、再度支社へ入社という形式を取っていた。
つまり、現地採用にしてコストカットをしているのである。
まあ、駐在になっただけで贅沢三昧をしてきた先駆者達の付けが、後々になって回ってきたという事・・・
なので私は、正直、自分の生活レベルを下げてまで、海外駐在をしたいとは思ってなかったので、今の会社でタイの支社に出向するのは、少々気が引けた。

今の会社を辞めて、タイに支社のある別の会社に転職し、駐在として赴任するのを待つという手もあるが、正直な話、「今の会社以上の好条件で、私を雇用してくれる会社は無いだろう?」とも考えた。
どちらにせよ、メーオと結婚できたとしても、タイで生活する場合は、生活レベルを今の生活レベルより低いものを望まなければならない・・・

私は、「そういった部分での妥協はできない!」と思った。
最初こそ、互いの気持ちだけで十分なのかもしれないが、後々はそうはいかないことは、経験上、十分理解しているつもりだった・・・

物質的な豊かさがすべてではないが、お互いの気持ちだけで、物質的な豊かさで足りない部分を補う事が不可能なのが現代社会の構造で、「両方のバランスがうまく取れていないと幸せになれない!」と思っている私は、メーオの出した条件に対して、あからさまに不快感を表してしまった・・・

メーオは、「大丈夫。しばらくはお父さんの下で働けばいいのよ。」「そのくらいは私の方でなんとかできるわ!」と言った。
私は、「タイでの労働許可証は簡単に取れるの?」と、再度メーオに聞き返すと、「大丈夫。ここはタイだからどうにでもなるわ。」と答えた。
「後先考えない、タイ人らしい回答だ・・・」と私は心の中でつぶやいた。
海外で合法的に働くのは容易なことではないということは、私自身が骨身にしみて分かっていることだ。
たぶんメーオは、日本で不法就労をしていた事で、あんまりその事に対する罪悪感がないのだろう・・・

メーオは、「私と結婚したいという事は、私を幸せにしてくれるという事でしょ?」
「それなら、私が幸せだと感じるようにして。」
「勝手な意見だけど、私は、自分の体を売ったという恥ずかしい過去がある日本では幸せになれないの。」
「だから、カスがタイに来て・・・」
と、嘆願するような眼で私を見つめた・・・

私の表情が優れない事を理解したメーオは、「もちろん答えはすぐに出せないと思う。」
「日本は男性上位だし、日本人男性は仕事に対して誇りを持っているから、女性に養ってもらうなんて考えは受け入れがたいでしょうね。」
「でも、本当に私の事を愛していて、私を幸せにしてくれるなら、私のお願いを聞いて。」と言った。
私は、メーオが言っていることも理解できたが、そうそう簡単にメーオの条件を受け入れられないでもいた・・・

タイに滞在できる日数は、今日を入れて後2日。
2日目は日本に帰国するので、十分な時間が取れるのは今日だけだった。
メーオは、「とりあえず今すぐ答えを出してほしいと言っているわけではないから、今日は今からデートしましょう!」と、微笑みかけてくれた。
その微笑みに、幾分か救われた気がしたが、私の気持ちはすっきりとはしなかった・・・

その日は、メーオにバンコクを案内してもらい、ディナーを食べ、メーオは自分の家に、そして私はホテルに戻った。
明日はとうとう日本への帰国の日。
それまでに、すべての回答が出るとは、到底思えなかった・・・
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スーブー
2008-01-10 Thu 00:08
メーオにプロポーズを断られた私は、その晩のうちにメーオの家を出た。
悲しみ・怒り・恥ずかしさ・etc...
いろんな感情が頭の中で絡み合ってしまい、何一つ冷静な判断ができなくなってしまった私は、とにかく一刻も早くメーオから離れたいと思っていた。
もちろんメーオは私を引き止めたが、私としては、さすがそれはできなかった・・・

知らない国で、突然ホテルを探さなくちゃいけなくなることは、仕事上、多々あったので、その日から日本に帰るまでのホテルはすんなり見つけることができた。
でも、日本に帰るまでの間、何をすればいいのかは、皆目見当がつかなかった・・・

私は、とりあえず部屋に入り、シャワーを浴び、ベットに横になった。
そして、メーオにふられた時のことを思い出し苦笑いをした。
「メーオとの今後の事をはっきりさせよう!」などという、さもカッコ良い名目のもとにバンコクに来たが、実は、「メーオが私の申し入れを断るはずがない。」という自惚れに浸っていた自分に気づき無性におかしくなった。
でも、ある意味これで、今回の訪タイの目的は達成したと言える。
「それだけでも意味はあった。」と自分に言い聞かせた。
そんな事をベットの上で一人考えている間中、私の携帯は鳴りっぱなしだった。
メーオからの電話と解っていたが、その晩はそれらすべてを無視した・・・

朝方まで眠れなかった私だったが、いつの間にか眠っていたようで、目が覚めた時は、もう昼近くになっていた。
私は、「昨晩の事がすべて夢であれば・・・」と思ったが、携帯のメーオからの着信履歴を見て、「あれは現実の事だったんだ・・・」と改めて、昨晩の出来事を思い出していた・・・

着信履歴は、メーオからのものでいっぱいになっていた。
ふった相手とはいえ、はじめての国で、夜、一人飛び出した外国人である私を、心配してくれたのだろう。
私も、このまま無視するのも大人げないと思い、メーオに電話をした。
メーオへの電話は、ものの数コールで取られた。
そして電話の向こうには、かなり怒った様子のメーオがいた・・・

まあ当然だか、電話に出てすぐは、メーオから叱られまくった(笑
最初こそ、「君には関係ないことだ!」と反論していたが、メーオに泣きながら怒られると、私としてはもう何も言えなくなってしまい、最終的には、私からメーオに謝り、現在滞在しているホテルを伝えた。
メーオは、「それじゃ今からそのホテルに行くから!」と伝え、そうそうに電話を切った。
私は、メーオを部屋に入れると「また喧嘩が始まるかもしれない?」と思い、メーオをホテルのロビーで待つことにした・・・

メーオを待つこと、1時間30分。
「こんなことなら、部屋で待っていればよかった。」と、少々後悔しているところにやっとメーオが現れた。
私は、できる限りの笑みで手を振りながらメーオを迎えたが、メーオは私の前に立つなり、私の頬にいきなり平手打ちを食らわせた。
そして、「スーブー!」と叫んだ。
後でわかったことだが、「スーブー」とは、タイ語で、「バカ」とか「アホ」という意味に近いものらしいが、意味としてはかなり強い侮蔑の意味がこもっているらしい・・・

私は、メーオの迫力に負け即座に謝った(笑
メーオは私の手を握り、ホテルのロビーにあるソファーまで歩きだした。
ホテルのロビーには、かなり力のこもったメーオのヒールが鳴らす音がこだました・・・

メーオは私をソファに座らせ、自分はその前に仁王立ちし、昨晩の私の取った行動を、とうとうと非難していた。
私は、メーオが文句をすべて言いきった頃を見計らい、再度謝ったが、「私の気持ちだって察してほしい。」とだけメーオに伝えた。
するとメーオは深いため息をつき、「私も言いすぎたわ・・・」と言い、私の横に腰かけた・・・

しばらく二人して無言のまま座っていたが、メーオのほうから口を開いた。
「カス、あれから私もよく考えたんだけど、私はカスと結婚したい。」
私は、メーオの思いがけない言葉に胸が高鳴った。
「でもひとつだけ条件があるの・・・」
私は、メーオの眼をじっと見つめ、「条件って?」と聞き返した。
「条件とは・・・」
「カスがタイに住むこと。」
「それが可能なら、私はカスと結婚したい。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は、メーオから飛び出した、予想だにしなかった「結婚の条件」に、固まってしまった・・・
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プロポーズ
2008-01-09 Wed 15:17
シロッコ(Sirocco)とは、シャングリラホテルの手前の信号にある、State Towerの63階にある、オープンエアのレストランだった。
ホテルの屋上にこんなレストランがあるなんて、正直驚いた。
日本でもやればできるのだろうが、色々と法律があってできないのだろう。
それを実現しているバンコクは、いろんな意味ですごいと思った・・・



こんなところでディナーを食べようものなら、よほどの事がない限り、今晩私がやろうとしている事は、「失敗しないだろう?」と思った(笑

そんな雰囲気のいい場所でのディナーも滞りなく進み、お酒も体に回った頃、私は今まで聞きづらかった事をメーオに質問した。
「メーオの家って、バンコクでも生活レベルが高いと思うんだけど、なんで日本にあんな仕事をしに来たの?」
「もちろん、バンコクにお店を出すためというのは聞いたけど、あのお父さんなら、それなりの援助はしてくれるんじゃないの?」
メーオはしばらく黙っていたが、私の質問に対して、ようやく重い口を開いた・・・

「すべてはお姉さんへの対抗心かな・・・」
「私は姉さんの事が好きだけど、一番苦手でもあるの。」
私は、初日にお会いしたメーオのお姉さんの事を思い出し、なんとなくメーオが言いたい事は解った。
でも、それと、メーオが日本に売春に来た事は何の接点もないように思えたので、その事について深く突っ込んだ・・・

「姉さんは、ジェイクと結婚したことで、ジェイクファミリーの後ろ盾を手に入れたの・・・」
「それで、ジェイクのお金を元手に、色々とビジネスを広げていっている。」
「私はそれに負けたくなかったの・・・」
「そして姉に完全に勝つためには、誰の手も借りずに、自分の手でビジネスを成功させる事だと思い、ああいう手段を選んだの。」
と説明してくれた。
ただ、お姉さんもお父さんも、メーオがアメリカ以外の国で、メーオがよからぬ仕事をしてきたことをうすうす感づいているらしい。
まあ、常識ある大人なら誰でもわかることだろう。
しかし、自分のファミリーがそんな事をしてきた言うのがばれると世間体的に良くないという事で、お父さんもお姉さんも、メーオを問い詰めないだけらしい・・・

私はメーオになんと声をかけてよいかわからなかったが、とりあえず重くなった話を少し軽くするつもりで、「じゃあ、これからが勝負だね。」と言い、メーオの前にワイングラスをかざした。
メーオもそれに答えてくれて、日本語で、「カンパイ」と言い、グラスを重ねてくれた。
そして、「もう少し夜景の見えるところに行こうか?」とメーオを、先端にあるスタンディングバーへ誘った・・・

眼下に流れるチャオプラヤー川を見ながら、私達は日本で起こったことを色々と話した。
当時は、苦しくて、辛くてたまらなかった事なのに、今では昔話として笑って話す事が出来た。
こんな日が来るなんて、あの当時は想像もできなかったのに・・・

そんな話をしていた私達だが、急に会話が途切れた。
そして、それを合図に、私はメーオに、「結婚しよう。」と突然プロポーズした。
するとメーオは、私の周りを見渡し、「婚約指輪はどこにあるのかな~」と、冗談で返してきた。
私はそれを、メーオなりの照れ隠しか何かだと思っていたが、そうではなかった・・・

メーオは、私の眼を見ながら、「カス、ありがとね。」「こんな私にプロポーズしてくれて・・・」
「でもね、カスは私みたいな汚れた女と結婚すべきじゃないの。」と言った。
私は、そのメーオの言葉に狼狽してしまった。
そして、ありとあらゆる言葉で、自分の気持ちを伝え、なんとかメーオにプロポーズを受け入れてもらおうと頑張った。
しかしメーオの意思は固く、私のプロポーズを受け入れることはなかった。
でも、「好きだけど結婚はできない・・・」という、最も陳腐な言葉がメーオの口から出てきたときに、私はすべてを諦めた。

それは、メーオと出会って、1年9ヶ月が経った、2005年3月の事だった・・・
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偽りの平穏
2008-01-08 Tue 13:47
2泊3日のフアヒンへの小旅行を満喫した私達は、後ろ髪をひかれる思いでフアヒンを後にした。
今回の旅行で、私は、国際免許証を用意してきていなかったので、ずっとメーオに運転をお願いしていたのだが、さすがにそれも悪いと思い、フアヒンからバンコクへの帰路は、私が運転をすることになった。
フアヒンからバンコクへの道は、ただずーっとまっすぐな道で、周りの景色も、あまり変わり映えのしないものだったので、私は睡魔と格闘しながら運転を続けた。
しかし助手席に座っているメーオは、私の苦労を知ってか知らずか爆睡モードだった(笑

そのまましばらく走っていると、突然、警察の検問に出くわした。
まっすぐな一本道だったので、逃げるわけにもいかず、私は車を警察に言われるままに、路肩に止めた。
そして、警察が私たちの車に近寄り、何か言ってきた。
ネイティブのタイ語がほとんど分からない私は、助手席で寝ていたメーオに助けを求めた。
メーオは最初、寝ぼけて私たちが置かれている状況がわからなかったようだが、すぐさま我に返り、警察と何か話しだした。
運転席の私をはさんで、運転席の窓側の警察とメーオで、何か交渉をしていたようだが、ものの2・3分もすると、メーオが、「カス、100バーツを警察に払って!」と言った。
「100バーツ?」
日本円にすると、300円足らずのお金(今はバーツ高なのでもっと安くなっているはず。)で、警察は私の免許不携帯の違反を見逃してくれた。

以前、メキシコで警察にからまれた時、私は心底、怖い経験をしていたため、「今回も同じようになるんじゃないか?」と、少々ビビッていたのだが、あまりの簡単さに、正直驚いてしまった。
メーオ曰く、「彼は田舎の警察だからあの程度済んだけど、バンコクの方はこうはいかないからね。」と、私の鼻をピンとはじいた。
私はメーオに、「私が運転していたらまずんじゃない?」と尋ねると、メーオは、「もう大丈夫よ!」「あと三十分も走ったら私と変わるから・・・」と言い残し、また眠ってしまった。
私は、そのメーオの対応に、少々不安を覚えたが、「これがタイなのだ・・・」と自分に言い聞かせ、また車を走らせた。
そして、その後は何事もなく、無事にバンコクに着いた・・・

メーオの家につくと、知らないおばさんが居た。
私は、彼女もメーオの親族の方だと思い、深々とワイをしたのだが、彼女は、メーオの家の世話をしているメイドさんだった(笑
メイドと言っても毎日来ているわけではないらしいのだが、メーオがいない間、一人で住んでいたメーオのお父さんの身の回りの世話を色々としているらしかった。
正直、メイドなど雇ったことのない私には、このおばさんとどのように接していいのかわからなかった。
なので、メーオにメイドさんとの接し方を尋ねた。
するとメーオは、「私達は雇い主だから、何を頼んでもいいのよ。」「毅然とした態度接しないとなめられるわよ!」と言った。
私は、そのメーオの言葉に少々驚いた。
なぜかというと、メイドさんへの言葉に、優しさのかけらも感じられなかったからだ。
「職種は違えど、以前は、メーオもママさんに使われる立場だったはずなのに・・・」
と、私は、なんとなく釈然としない気持ちが芽生えた。
でも、それがなんと青臭い感情であるかも、すぐ理解した。
結局人は、支配する側・される側にしか分けられないのだから・・・

そんな事を考えていると、メーオは明らかにメイドさんに向ける顔とは違う顔で私に話しかけてきた。
「カス、今日は、ちょっと雰囲気のいいところにディナーを食べに行きましょう!」
「シロッコってとこらしいんだけど、ディナーだけじゃなく、洒落たバーもあるって、姉さんが言ってたの。」
私は、「そんな雰囲気のいい場所なら、2人の今後の事をきちんと話し合うにはもってこいかもしれない?」と思い、メーオの提案を快く受け入れた。
そして来るべくディナーの時間まで、頭の中でどのような会話の流れで結論に持っていくかシュミレーションを続けていた。

頭の中で、私たち2人の話がまとまる流れを、ちょうど想像していた頃、きれいなドレスに着替えたメーオが二階から降りてきた。
昔のお客を引くためのギラギラとしたドレスと違い、清楚な感じのするドレスをまとったメーオに、私は、しばし見とれてしまった。
メーオは、ちょっと照れくさそうにしながら、「ほら、カスも早く着替えてよ!」「バンコクは渋滞がひどいから、早めに出ないと予約の時間に間に合わなくなるわよ。」と、私を急きたてた。
私は、「今晩は、私たちにとってきっと記念日になるに違いない。」と、胸を高鳴らせ、フォーマルな洋服に着替えたのであった・・・
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愚者の驕り
2008-01-07 Mon 00:27
昨晩、互いを求め合い、そして事が終われば、のどの渇きをいやすかの様に、互いにヘネシーをがぶ飲みしていた私達は、朝からひどい二日酔いに襲われていた。
メーオは昨晩から何も食べておらず、私に至っては、昨日の昼から何も食べていなかったのだが、さすがにそんなに食欲もわかないので、私達は頭を冷やす為に、プールサイドで休憩することにした・・・

頭を押さえながら、やっとの事でプールサイドにたどりつき、日陰の絶好の位置のデッキチェアーを陣取り休もうとすると、昨日一緒に騒いだバーテンダーが私たちを見つけてかけよって来た。
二日酔いの私たちに、そのバーテンダーの底抜けに明るい声は、耐えられないものだったが、私たちの異変に気づいたそのバーテンダーは、ミネラルウォーターのボトルと、タイで売られている二日酔いの薬と、ビニール袋にカクテル用のクラッシュドアイスを詰めて持ってきてくれた(笑
そして、「何かほかに必要なものがあったらいつでもいってね!」と言い残し、仕事場へと消えて行った。
私は、メーオに、「あのバーテンダー、とってもいい奴だね。」「気分がよくなったら、またあのバーでカクテルでも飲もうか?」とメーオに言った。
するとメーオは、「カスって、男に興味を持つようになったの?」「彼ってゲイよ。」とニヤニヤしながら言った。
「彼はカスに興味を持っているみたいだし、今晩は彼の相手をしてもかまわないわよ~」と言い、笑いながら私に背を向けた。
私は、「背を向けたメーオを後ろから抱えるように抱きしめ、「今晩は既に先客がいるから、残念だけど彼の相手はできないな~」と言い、メーオのお尻を、なでるように触った。
メーオはその手を軽く叩き、舌をペロッと出し、クラッシュドアイスで満たされた袋を額に乗せ目を閉じた。
私は、そのメーオの顔を覗き込み、不意にキスをした・・・

プールサイドで夕方ぐらいまでまどろんでいると、さすがに二日酔いも治ってきた。
そして二日酔いが治ってきたら、今度は猛烈な空腹感が襲ってきた。
なので、私はメーオに、「そろそろディナーでも食べに行かないか?」と言った。
メーオも、そろそろおなかが空き始めていたらしく、「じゃあ、向こうにあるシーフードレストランに行きましょう!」と言ってきた。
タイのシーフードは、黄金町にいる頃から大好きだったので、私は二つ返事で、「OK」した。

フアヒンのシーフードレストランは、生簀の中で生きているエビや魚を選んでその場で調理してくれるスタイルだった。
私は、「ウチワエビのガーリック炒めを外さないで!」とだけメーオに伝え、後はメーオにお任せ状態だった。
そして早々と席に座り、心地よい海風を頬に受けながら、漆黒の闇から聞こえてくる波音に耳を傾けていた・・・

しばらくすると、オーダを済ませたメーオが戻ってきた。
そして、「タイは気に入った?」と私に訪ねてた。
もちろん、いいところだと思うが、まだタイに来て、3日しか経ってない。
それに、タイの一部だけ見て、「気に入った!」というのは、少々抵抗があったが、リップサービスも込めて、「タイは最高だよ!」と答えた。
その私の答えに、メーオは本当にうれしそうな顔をした。
本当に、本当に、うれしそうな顔をしてくれた・・・

そしてその晩のディナーは、メーオの笑顔が示しているように、最高に楽しいものとなった。
私は正直、「メーオとの仲は元に戻った。」と思ったぐらいだった。
でも、もちろんそれは、私の自惚れだったというのは言うまでもない・・・
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冷たい激情
2008-01-06 Sun 15:10
フアヒン(ホアヒン)とは、バンコクの南西部に位置する、タイ王室の避暑地としても名高いリゾート地だった。
タイのリゾートというと、パタヤのような毒々しい場所しかイメージがわかない私にとって、フアヒンは、静かで落ち着いた非常に感じのよいリゾートに思えた。
このフアヒンで、私達は、2泊3日の小旅行をすることになった・・・

メーオは、「カスは、こういう落ち着いたところが好きだとおもったからね~」と、自分の選択が間違っていなかったという事を自慢したいかの様だった(笑

私達は、フアヒンのH○ltonホテルに泊まった。
昨日タイにやってきて、突然メーオのお父さんや親族と食事会をする羽目になった私は、正直かなり疲れていたので、ホテルの部屋に入った瞬間に、かなり強い睡魔に襲われた。
でも、さすがにメーオと二人きりの時に爆睡するわけにはいかないので、頑張っていると、それを察したメーオが、「カス、疲れているなら眠っていいのよ。」と、優しい言葉をかけてくれた。
私は最初こそ、「大丈夫だよ!」と言っていたが、ベットの上に寝転んで、メーオと話しているいるうちにいつの間にか眠ってしまっていた・・・

どのくらい寝たのだろう?
気がつくくと、当たりは薄暗くなっていた。
私は寝ぼけて、最初は、自分の部屋にいるような錯覚に陥っていたが、メーオとフアヒンに来ていたことを思い出し、ベットから飛び起きた。
周りを見回してもメーオは見当たらず、私は、「メーオを怒らしてしまった・・・」と、後悔の念に駆られていた。
一人部屋にいても埒が明かないので、私はメーオに電話することにしたのだが、デスクの上に手紙が置いてあるのに気がついた。
その手紙には、「プールサイドにいます。」と書かれていた。
私は、あわててプールサイドに向かった・・・

プールサイドを見渡すと、メーオはバーに座って、見るからに軽そうなバーテンダーと楽しそうに話していた。
それに少々嫉妬した私だが、そんな事は全く気にしてないかのように、さりげなくメーオの横に座り、腰に手をまわし、メーオの頬に軽くキスをした。
頬へのキスをメーオに拒否されないかと内心、ビビりながらのキスだったのだが、メーオがそれを受け入れてくれたことで、私はなんとなく、このフアヒンへの旅行が、私たちをまた昔のように戻してくれるのではないかと考えていた・・・

そんなこんなでがぜん気をよくした私は、かなり饒舌になりそのバーでかなりのお酒を飲んでしまった。
バーテンダーの兄ちゃんも、以外にもナイスガイで、私達はまだ日も落ち切っていないプールサイドのカウンターバーで大騒ぎをしてかなり酔っぱらってしまった。
しかしさすがに、このままここで飲み続けるわけにもいかないので、私とメーオは、一度部屋に戻り着替えてディナーに行くことにした。

しかし、酔っぱらった私は、理性を抑えることができず、部屋に着くなりメーオをベッドに押し倒してしまった。
メーオもお酒の力も手伝って、すんなり私を受け入れた。
頭の中では、「メーオと2人の今後について話し合うんじゃなかったのか?」と自分に諭しかけている自分がいたのだが、そんな事お構いなしに、メーオの体を求めてしまった。
フアヒンの初日は、ディナーも食べず、ただただベッドの上で溺れていく二人だった・・・
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